本の花束 企画・制作 

本の花束オリジナル作品
創作むかしばなし

正直じいさんよくばりじいさん
むかしあるところに
気の良い 正直爺さんがおりました。
今日も朝早くから、畑仕事に精を出しています。
すると、 「コツン!!」
何か鍬にあたりました。
おじいさんが掘り出してみると、
人が入れるほどの大きなツボでした。
「それにしても立派なツボじゃ。
うちの水がめにしようかのう。」
正直爺さんはツボを置いたまま、
また畑仕事を続けました。
そこへチョウチョウが飛んできて、
ひらひらとツボの中に入りました。
するとどうでしょう。
中からたくさんのチョウチョウが飛び立ったのです。
「おお、コレは見事じゃ!」
「さっき見た時は空っぽじゃったのに…不思議じゃのう。」
と、畑から掘りおこしたばかりのイモを1つ、
ツボの中に入れてみました。
すると…イモが沢山に増えて出てきたのです。
「おお、これは これは!不思議なツボじゃ!」 
そこへ、お婆さんがお昼ご飯を持ってきました。
「お爺さん、握り飯ですよ。半分ずつ食べましょうか。」
「待て待て、わしに貸してごらん。
このツボの中に入れてみよう」
お爺さんが にぎり飯をツボの中に入れると…
にぎり飯が、沢山になって転がり出てきたのです。
「まあまあ、なんてすごいこと!」
「さあさ、婆さんや。
二人で腹いっぱい 食べよう 食べよう。」
けれど、にぎり飯は減りません
そこで、隣に住む爺さんと婆さんを呼んで
一緒に食べることにしました。
ところが、この隣の爺さんと婆さん、
大変な欲張り夫婦。
「こんなに沢山の握り飯、いったいどうしたんじゃ」
横で話を聞いていた、欲張り婆さん。
そのツボさえあれば、小判はザクザク、
お米もどっさり、着物も、ご馳走も……
何とか自分のものにできないものかと考えました。
一方、欲張りじいさんは、
ツボの中がどうなっているのか
見たくて見たくてたまりません。
ツボに近づくと、身を乗り出して、中を覗き込みました。
勢い余って「ああっ!」
ツボの中に落ちてしまったのです。
すると……今度は、欲張り爺さんが
ツボの中から、沢山飛び出してきたのです。

「このツボはわしのもんじゃ!」
「いいや、わしのじゃ!」
「なにを言う!これはあたしのものだよ!」
そして、欲張り婆さんも入って
壺の取り合いを始めました。
大勢でツボを引っ張り合っているうちに、
「ガシャン!!」
落として、ツボを割ってしまいました。
壺から出てきた欲張り爺さん達は
かき消すように居なくなってしまったのです。
「あんたが悪いんだよ!
あんなに引っ張り合って!欲張り!」
「なにを!おまえが一番引っ張っとったじゃないか!
このごうつくばり!」
欲張り爺さんと欲張り婆さんは、大喧嘩を始めました。
気の優しい正直爺さんは、
「ばあさんや、ツボは無くなってしまったが、
わしらは今まで通り暮らせればそれでいいのぉ。」
「そうですよ。おじいさん。

そして又、畑仕事に精を出しましたとさ
おしまい