長 新太/作・絵
       文研出版

つきよのキャベツくん

長 新太 / 作・絵
キャベツくんがあるいていると、
ブタヤマさんがやってきました。

でもね、よくみると
ブタヤマさんではありません
へんなものがやってきて
「わたしはトンカツであーる」
キャベツくんはびっくりしました。
あたたかくて、とてもいいにおいがします。
ブタヤマさんがやってきて、
おおきなトンカツをみて
「ブキャ!」

いいにおいがするので
いそいでやってきたら、
なーにこれは?
ちょっとたべてみたいけど、
「トンカツは、ソースがないとだめです」

いいにおいが、もりのおくのほうへ
ゆっくりとながれていきます。
森の中からトンカツ・ソースが走ってきました。
「こんにちは」とあたまをさげると
ソースがちょっと出てしまいました。
ほそい月が出てきました。
「お月さんも、おなかがすいているみたい」
スルスルスルと月が降りてきます。
そうして、パクリと、
トンカツを食べてしまいました。
「まってよ、まってよ。
ぼくたちの、トンカツだよー」
トンカツを食べた月は、
まるくなりました。

ブタヤマさんは泣きそうになりました。
「どこかで、おいしいものを、たべましょう」
「そうしましょう。そうしましょう」

月のかがやく、夜です。