ボクのじてんしゃが、壊れた
でも、新しい自転車は買ってもらえるわけじゃない
日曜日に誘われても、僕には乗っていける自転車はもうないんだ
なのに何で僕なんか誘うんだよ…
涙目になりたいのは僕なのに、空の方が泣きそうだ

団地の引っ越しの後に残されたオンボロ自転車
それが僕の自転車になった
傷だらけでボロいけど、ちょっと掃除したら結構乗れるじゃないか
お…と…ハンドルが曲がってべダルは外れそう、ブレーキも甘い
何だよ? こんなボロ。あ〜あ、新品じゃないもんなあ

(表紙画像掲載は
出版社の承諾を得ています)

芸術新聞社

薄暗くなってライトを付けると、べダルがキーキーときしむ
それがやがて子供の笑い声に聞こえてきて
ふと見ると、ライトにぼんやりと子供たちが映って見えた
自転車のライトには前の持ち主との楽しい思い出が
たくさん映し出されては消えていく
そうだよな…お前にだって、前のご主人がいたんだもんな
大切にされてきたんだよな。

そうか、わかってきたよ、お前の癖や乗り方がさ…
新しいボクの相棒。
これからは、ボクとお前で、また新しい思い出を作るんだ
ボクのじてんしゃ
きむらゆういち/文
平澤重信/絵